エスコンフィールドの天然芝はなぜ育つ?北海道の寒さを克服した球場の仕組み

北海道日本ハムファイターズの本拠地、エスコンフィールドHOKKAIDO。

球場に入ると目を引くのが、鮮やかな緑色のグラウンドです。

エスコンフィールドでは、人工芝ではなく天然芝が使われています。

しかし、北海道は冬になると雪が積もり、気温も氷点下まで下がる地域です。

しかも、エスコンフィールドには大きな屋根があります。

「北海道の寒さで天然芝は育つの?」

「屋根があるのに日光は足りる?」

「冬の間はどうやって管理している?」

そんな疑問を持ったことがある人もいるのではないでしょうか。

実は、エスコンフィールドには天然芝を育てるためのさまざまな工夫が取り入れられています。

巨大なガラス壁、開閉式の屋根、地中の温度調節設備など、球場の特徴的な構造には芝の育成という大切な役割があります。

この記事では、エスコンフィールドの天然芝が北海道の寒い環境でも育つ理由を、球場の設計や設備から紹介します。

#1 エスコンフィールドHOKKAIDO|FOCUS|実績|大林組

大林組の建築設計プロジェクトにフォーカスして、そのデザインやコンセプトをざまざまな角度からひもときます。

エスコンフィールドは日本初の開閉式屋根付き天然芝球場

エスコンフィールドHOKKAIDOは、2023年に開業した北海道日本ハムファイターズの本拠地です。

最大の特徴の一つが、開閉式の屋根と天然芝を組み合わせていることです。

日本国内では、開閉式屋根を備えた野球場で天然芝を採用した初めての球場として知られています。

ドーム型の球場では人工芝が使われることもありますが、エスコンフィールドでは天然の植物をグラウンドで育てています。

天然芝は生きている植物です。

日光や水、空気、適切な温度がなければ、健康な状態を維持することはできません。

そのため、屋根付きの球場で天然芝を育てるには、野球の試合を行うための設備だけでなく、植物が育つ環境も考える必要があります。

エスコンフィールドは、建物の設計段階から天然芝の育成を重要な条件として計画された球場なのです。

天然芝の広さは約7,600平方メートル

エスコンフィールドの天然芝は、内野と外野を合わせて約7,600平方メートルあります。

これは、縦100メートル、横76メートルの長方形と同じ面積です。

実際のグラウンドは長方形ではありませんが、広さをイメージするには分かりやすいでしょう。

これだけ広い芝生を、野球の試合に適した状態で維持する必要があります。

しかも、グラウンドの場所によって日当たりや風の流れが同じとは限りません。

球場の壁や屋根によって日陰になる場所もあります。

天然芝を育てるには、単に芝を植えるだけではなく、フィールド全体の環境を考えることが重要になります。

天然芝の種類はケンタッキーブルーグラス

エスコンフィールドで採用された天然芝は、西洋芝の「ケンタッキーブルーグラス」です。

ケンタッキーブルーグラスは、比較的涼しい気候に適した芝として知られています。

北海道のような寒冷地での育成を考えるうえで、芝の種類を選ぶことも大切なポイントでした。

エスコンフィールドの芝は、球場が完成してから初めて育てられたわけではありません。

2020年5月、北海道千歳市の畑で種まきが始まりました。

複数の種類を試しながら検討を重ね、エスコンフィールドに適した芝が選ばれています。

その後、約2年半をかけて育てられた芝が球場のグラウンドに敷かれました。

つまり、2023年の開業よりもずっと前から、天然芝を使った球場づくりが進められていたのです。

大きなガラス壁には芝を育てる役割がある

エスコンフィールドの象徴的な設備といえば、外野側に広がる巨大なガラス壁です。

初めて球場を訪れた人は、その大きさに驚くかもしれません。

このガラス壁には、球場から外の景色を見せるだけではない役割があります。

それが、天然芝に日光を届けることです。

植物が育つためには、光合成に必要な光が欠かせません。

しかし、屋根や壁に囲まれた球場では、屋外のグラウンドに比べて日光が届きにくくなる可能性があります。

そこでエスコンフィールドでは、南東側に大きなガラス壁を設け、グラウンドへ自然光を取り込める構造にしています。

特に朝の日差しを芝の育成に生かせるよう、球場の向きも検討されました。

観客にとっては開放感のある景色ですが、天然芝にとっても重要な設備なのです。

屋根が開くのは天然芝のためでもある

エスコンフィールドには、巨大な開閉式屋根があります。

屋根を閉じれば、雨や雪などの影響を抑えながら試合を行うことができます。

一方、屋根を開けば、球場内に日光や外の空気を取り入れられます。

この開閉式屋根も、天然芝の育成を考えて採用された設備です。

屋根の重さは約1万トン。

24台の走行台車が屋根を支え、レールに沿って移動させる仕組みになっています。

開閉にかかる時間は、片道約25分です。

これほど大きな屋根を動かすのは、観客に開放感を届けるためだけではありません。

天然芝に必要な日光や風を取り入れることも、大切な目的の一つです。

なお、屋根は必ず毎日開けるわけではありません。

天候や気温、球場の運営状況などによって開閉の判断が行われます。

芝の下には温度を調節する配管がある

北海道で天然芝を育てるうえで、大きな課題になるのが気温です。

夏は気温が高くなる日もありますが、冬は厳しい寒さが続きます。

地上から見える芝だけでなく、土の中の環境も重要になります。

そこでエスコンフィールドでは、フィールドの下に温度を調節するための配管が設置されています。

この設備では、夏には冷水、冬には温水を流すことで、天然芝の育成に適した地中温度を保つ工夫がされています。

芝は根を張って成長する植物です。

地表だけでなく、根がある土の温度を管理することにも意味があります。

屋根やガラス壁のように観客から見える設備だけでなく、グラウンドの下にも天然芝を支える仕組みが隠されているのです。

ガラス壁の下には風を取り込む仕組みも

天然芝を育てるために必要なのは、日光と温度だけではありません。

空気の流れも重要です。

屋根や壁に囲まれた大きな建物では、場所によって風が通りにくくなることがあります。

エスコンフィールドでは、ガラス壁の下部に「ウインドトンネル」と呼ばれる通風の仕組みが設けられています。

これは、外から風を取り込み、球場内の空気を循環させるための工夫です。

設計段階では、球場内で風がどのように流れるかもシミュレーションされました。

エスコンフィールドの天然芝は、光・温度・風という複数の条件を組み合わせて育てられているのです。

建設前には模型を使って芝の育成を検証

エスコンフィールドの天然芝は、実際に球場が完成する前から研究されていました。

設計・施工を担当した大林組では、球場の30分の1の大きさの模型を6棟製作しています。

そして、北海道の寒冷な環境で天然芝を育てるための検証を約2年間行いました。

模型では、球場の形状や方角などの条件を考慮しながら、芝の育ち方を調べています。

また、大林組が開発した「ターフシミュレータ」という技術も活用されました。

これは、日光や温度などの条件によって芝がどのように育つかを予測するための技術です。

巨大な球場を完成させてから問題を考えるのではなく、建設前から天然芝の生育環境を確かめていたことが分かります。

エスコンフィールドの天然芝は、建築技術と植物の育成技術を組み合わせた取り組みといえるでしょう。

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冬の間も天然芝は育っている?

北海道の冬は、天然芝にとって厳しい季節です。

ケンタッキーブルーグラスは比較的寒さに強い種類ですが、寒い時期にも夏と同じような速さで成長するわけではありません。

一般に、寒地型の芝は気温が低くなると成長が鈍くなります。

エスコンフィールドでは、冬場も地中温度を調節する設備などを活用できるよう設計されています。

ただし、冬のすべての日に芝がどの程度成長しているのか、どのような作業を行っているのかは、一般公開されている設備情報だけでは分かりません。

「冬でも夏と同じ状態で成長している」と考えるのは正確ではないでしょう。

大切なのは、寒冷地でも天然芝を維持できるよう、球場全体にさまざまな工夫が取り入れられていることです。

天然芝は選手のプレーにも関係する

天然芝と人工芝では、グラウンドの性質が異なります。

ボールの転がり方やバウンド、選手が走ったときの足元の感覚などに違いが出ることがあります。

そのため、天然芝のグラウンドでは、芝の長さや地面の状態を適切に管理することが重要です。

また、天然芝は試合や練習によって傷むこともあります。

特に選手が繰り返し走る場所や、スライディングが行われる場所などでは、芝や土の状態を整える必要があります。

エスコンフィールドでは、こうしたグラウンドの維持管理も球場運営の大切な仕事の一つです。

テレビ中継では選手のプレーに注目しがちですが、その舞台となる芝にも多くの技術が使われています。

ファンも天然芝のメンテナンスを体験できる

エスコンフィールドでは、ファンが天然芝の管理に触れられる企画も実施されています。

2026年には、試合後に参加できる「天然芝メンテナンス体験」がチケットオプションとして案内されました。

この体験では、外野の天然芝エリアに入り、目土作業を行うことができます。

目土とは、芝の状態を整えるために土を補う作業のことです。

普段はスタンドから眺めているグラウンドに入り、芝の管理の一部を体験できる珍しい企画です。

ただし、有料のチケットオプションであり、すべての試合で実施されるわけではありません。

参加したい場合は、対象試合や料金、販売状況を事前に確認する必要があります。

エスコンに行ったら天然芝にも注目してみよう

エスコンフィールドで野球を観戦するとき、多くの人は選手や試合展開に注目するでしょう。

しかし、グラウンドを少し違った視点から見てみるのもおすすめです。

外野側の大きなガラス壁。

開閉式の巨大な屋根。

そして、その下に広がる天然芝。

これらは別々の設備ではなく、天然芝を育てるという目的でもつながっています。

特に屋根が開いている日は、日光が球場内へ入る様子を感じやすいかもしれません。

一方、屋根が閉じている日でも、ガラス壁から取り込まれる自然光や球場の構造に注目できます。

天然芝がどのように育てられているのかを知ると、普段見ているエスコンフィールドの景色も少し違って見えるのではないでしょうか。

まとめ|エスコンの天然芝は球場全体で育てられている

エスコンフィールドHOKKAIDOは、日本初の開閉式屋根付き天然芝球場です。

北海道という寒冷地で天然芝を育てるため、さまざまな技術が取り入れられています。

主な工夫は次の通りです。

・南東側のガラス壁から自然光を取り込む
・開閉式屋根で日光や外気を取り入れる
・グラウンド下の配管で地中温度を調節する
・通風設備によって空気の流れを確保する
・建設前から模型やシミュレーションで育成環境を検証する

エスコンフィールドの天然芝は、単にグラウンドへ植えられているだけではありません。

球場の向きや壁、屋根、地下設備まで含めて、芝を育てるための環境が考えられています。

次にエスコンフィールドを訪れるときは、選手がプレーする天然芝と、それを支える球場の仕組みにも注目してみてください。

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